コラム「風」平成17年3月

想いとジレンマ

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 ここ何年となかった豪雪に随分と汗をかかせられた2月から、ようやく春の足音が聞こえる3月に入りました。美郷町として初めて迎えた冬でしたので、除雪に関わる職員は体と気を遣い、町も相応の予算を使いましたが、様々なご意見もいただきました。予測できない雪に限りある人員でどのように対応していくのか、来年に向けての検討課題です。

 さて、今月は卒業の月。美郷町内でも三つの中学校、七つの小学校で共に学んだ友、校舎との別れに涙する卒業式があります。卒業式は特別なものですので、私としても何とか出席したいと思っていますが、体一つにつき残念ながらすべてには出席できません。この時期ほど孫悟空に憧(あこが)れることはありません。何とか分身を作りたい気分です。

 しかし世の中、思い通りにいかないことが多いのが常です。そう思い直しながら、出席できない学校に心の中でおわびしておりますが、3月はこうした想いを抱くものが他にもあります。予算です。これもなかなか思い通りにはいきません。今年の予算案編成は殊のほか大変でした。

 私は仙南の助役時代から通算8回、この作業に携わってきておりますが、今年はかつてない経験でした。旧三町村の継続事業や積み残し事業への対応、旧三町村間で格差のある制度の統一化などで支出が増大する一方で、収入は減少し、取り崩す貯金も少ない状況。はじめの段階では32億円の収入不足でした。何とか切り詰め、格差を約7億円まで調整しましたが、万策尽き、貯金を下ろすことで帳尻を合わせました。大切な住民サービスや事業は守りながらも、我慢してもらいたい内容も含む予算案となっています。想いに近づけば財政は逼迫(ひっぱく)し、財政を考えれば想いには近づけない。ジレンマです。心の中で皆さんにおわびしながら、ご理解いただけることを信じて編成作業に当たった次第です。

 これまで「やりくり」には多少の自信はありましたが、美郷の予算のやりくり、これはかなり厳しいぞ〜。体も頭もフル回転です。

(広報「美郷」平成17年3月号より)

このページに関する情報