コラム「風」平成18年4月

魅力の輪郭

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 土の香りを感じる時期となりました。安らぎと意欲の両方を喚起する、私には魅力の香りです。陽光が醸し出すこの香り、時期限定ですので、散歩の際、田んぼの周りで香りを確認してみてください。

 さて、人には香りを感じる嗅覚をはじめ、視覚、聴覚、味覚、触覚の五感があります。物事の印象は、これら五感を通じた情報の組み合わせでその輪郭の大小が決まってくるように思いますが、私は「町の輪郭」も同様の本質を持っているように思っています。

 10年程前、京都を訪れた時のことです。あるお寺の前でお香の香りがしました。とても心安らぐ気持ちになったことを記憶しております。きっと香りとお寺の佇まいのお陰です。また、食事においても至福の時間を過ごしました。独特の方言と独自の食材のお陰です。こうした五感を通じた感動は、やはり強い印象をもって心に残っています。

 では、美郷はどうでしょうか。昨年来町した文部科学省のある審議会委員の言葉です。「美郷町はいい所ですね。飾らなくて、実生活の薫りがします。それが魅力ですね」。その方は京都市在住でしたので、余計にそうした意見になったのかも知れません。

 しかし、このご意見は大変に示唆に富んでいます。都市から見る美郷の魅力と住む者が大切にしたい美郷の魅力。それを一致させることができれば町としてはベストです。住民も来訪者も共に満足させられるからです。そのためには、まずは足元を見つめ、自分たち「らしさ」をきちんと認識することが肝要です。次に外から見える魅力を把握していくことが大切です。その上で、何を提供して五感に訴えていくかを充分に検討することで、美郷の輪郭づくりが進むように思っているところです。

 今年度も地元再認識の「美郷めぐり事業」を実施しますが、新たに美郷の食材などを見つめる「地販地消推進事業」や都市圏で美郷の魅力をさぐる「美郷の味販売交流促進事業」などを実施します。こうした取り組みでその端緒を掴みたいと思います。その18年度がスタートです。

(広報「美郷」平成18年4月号より)

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