コラム「風」平成18年11月
縁(ゆかり)
秋田県美郷町長 松 田 知 己
最近、つくづく時間の経過を早く感じます。不惑を過ぎて、厄年を乗り越えれば誰でもそういうものなのか、それとも仕事柄、あまりに日常が忙し過ぎてなのか、ちょっと考えてしまうこの頃です。
さて、落ち葉舞うこの季節は、風の冷たさも相まって心(うら)淋しさを感じるところですが、それ故に「あたたかさ」に敏感になる時期でもあります。例えばかつての秋の風物詩、落ち葉焚きも、焼き芋が目当てと言うよりは、そのあたたかさに心引かれる魅力があったように思います。
同様にこの季節は、人の優しさにも敏感になる時期ではないか思います。日頃ご無沙汰している方から季節の便りが届いたりすると、春や夏とは違う「温かさ」を感じるのは私だけではないだろうと思います。
先日、イタリアのボローニャ国際児童図書展で受賞経験もある絵本作家の永田(ながた)萠(もえ)さんから、来年度のカレンダーとともに永田さんが定期的に執筆している、地元京都の新聞コピーが送られてまいりました。美郷町に関わる記事の内容でした。美郷町長としては、この上ない温かさを感じた次第です。昨年夏、文部科学省の審議会委員として美郷町を訪れ、その際に面識を持たせていただいた縁で、昨年は絵本を寄贈いただき、今回は、新聞コラムで美郷町の紹介です。改めて人との邂逅(かいこう)の大切さや縁の持つ温かさを実感しているところです。
そして今月3日、縁のお陰で実現する企画があります。「町の日」記念行事で、佐々木(ささき)毅(たけし)前東京大学総長からご講演をいただきます。日本を代表するお一人ですので、初めは困難かと思いましたが、「故郷だから」という佐々木先生のご厚情で実現の運びとなりました。改めて佐々木先生並びに縁に感謝です。皆さんにとっては、美郷出身の先生だからこそ感じられる何かがきっとあるものと思います。どうか、ご来場ください。
さ〜て、私も家業の関係で縁のある「魔法の水」で、個人的なぬくもりを求めてきゅ〜っと一杯やりますか、上燗で・・・。
(広報「美郷」平成18年11月号より)