コラム「風」平成18年12月
見えない力
秋田県美郷町長 松 田 知 己
師走です。もともと忙(せわ)しない身に、更に気持ちの上でも忙しさが増すような気がします。皆さんはいかがでしょうか。
さて最近、さまざまな外来語を目にします。行政関係者の私でも「?」と思う言葉がありますが、先日「ソーシャル・キャピタル」という言葉と出会いました。直訳では「社会資本」となりますが、例えば道路や各種公共施設などを意味する社会資本とは、どうも定義が違うようです。
地域における、目に見えない共通の規範や価値観、相互扶助の力などを言っているようですが、こうした力を「地域維持や地域振興のために役立てよう」というのが、使われている意図のようです。ある学者の研究では、こうした力が残っている所は、犯罪が少ないなどの特徴があるとのことです。
冷静に考えてみると、この力は農村地域の最大の特徴ではないかと思えます。「結」に代表される農作業の相互扶助、生活全般での助け合い、農道や水路の共同賦役、伝統行事などなど。言わば農村の真髄です。
だからでしょうが、先般、農林水産省でこれに係る研究会を立ち上げる話がありました。そしてどうした訳か私に委員委嘱があったところです。自分にとっても興味がある分野でしたので、喜んでお引き受けしましたが、美郷の地域振興に向けて自分の研鑚機会にもしたいと思っています。
現在、町が取り組んでいる「子ども見守り活動」や福祉、環境を中心にしたボランティア活動なども、こうした力が核心にあります。そして、農業生産に係る組織化もその範疇にあるように思っているところです。
現在のところ、集落営農組織は二十一組織が設立されておりますが、今後もその動きが拡大していくだろうと思います。各組織には、農業生産の効率化と合わせて、農村だからこそ守るべき「目に見えない力」の維持にも寄与していただくよう、改めてエールを贈りたいと思います。
最近、人も財源も少なくなってきているので、「一粒で二度おいしい」取り組みを目指しておりますが、集落営農組織にもこうした視点があるとは思ってもおりませんでした。この言葉と出会うまでは・・・。
(広報「美郷」平成18年12月号より)