コラム「風」平成19年3月
情報の読み方
秋田県美郷町長 松 田 知 己
遡(さかのぼ)ること二十ウン年前、大学三年生の時に「新聞記事の読み方」という題名のコラムを読んだ記憶があります。「同じ記事でも新聞によって捉え方、書き方が違うので、複数紙を読み比べてみた方が良い」という趣旨でした。図書館に行って確認したら、なるほど確かに違いがあり、情報を複数得ることの大切さを認識したことを覚えております。
さて先般、来年度スタートの「農地・水・環境保全向上対策」の実施方針が示されました。この対策は経営所得安定対策等大綱の一つの柱で、十アール当たり四千四百円を組織等に交付し、農地の適正管理や地域環境を保全するというものです。この四分の一の額は町が負担です。
この方針提示と前後して、対策に必要な市町村負担分(美郷では約四千八百万円)が地方財政措置、つまり地方交付税として交付される旨の報道がなされました。読んだ直後は小躍りして喜びましたが、「待てよ」ということで、別途の情報収集したところ、やっぱりでした。
市町村に増額交付の可能性があるのは、負担の三十五%についてで、それとて予算枠の関係から、全額を約束するものではないとのこと。財政措置を確保したと言われても、あまり当てにできない模様です。やはり「記事の読み方」に注意が必要でした。国は甘いはずありません。
従って、町負担分は他の施策を我慢して財源を捻出することになります。取り組まれる皆さんにはこうした事情を踏まえて、交付金を効果的に活用していただきたいと思います。この事業、集落営農と同様に、何としても実効ある取り組みにしなければなりません。
今の時代は、読み方の留意以前の問題、つまり真偽すら定かでない情報もかなり飛び交っております。やはり、一つの情報や話だけで思い込まない賢明さが必要です。とりわけ卒業を迎え、社会に飛び立つ若人のみなさん、情報はまずは真偽を意識し、その上で読み方にも注意する冷静さを身に付けましょう。そこそこ中年になった私からのエールです。とは言うものの、この中年の冷静さも練成途上ではありますが・・・。
(広報「美郷」平成19年3月号より)