コラム「風」平成19年12月
啐啄(そったく)
秋田県美郷町長 松 田 知 己
先般、機会があって宮崎県を訪れてきました。空港に到着するなり、まずは感心しました。その後、県庁方向に向かいました。県庁は観光客及び観光バスが溢れていましたが、極めつけは県庁隣の物産館でした。そこではレジにお客さんが列をなし、すべての販売物には知事のイラストシールが張られておりました。感心を通り越し、感嘆です。
東国原知事の「どげんかせんといかん」というPR魂とそれを活用しようとする業者魂の反応熱を感じました。私は「啐啄」という言葉を思い起こしました。
そっ啄とは雛が卵から孵るとき、雛自身が内側から殻を破るのと、親鳥が外側から殻を破ってあげるのが一致している様を語源としていると記憶しておりますが、まさに「売る」という行為に、業者と行政双方がそっ啄的に取り組んでいる様子に感嘆した次第です。
では美郷の物販はどうかとなりますが、町では現在、ご存知のとおり地販地消に取り組んでおります。これはいわば内側での取り組みです。合併で誕生した美郷にとって、まずは自らの意識と足場を固めることが必要と考えているからです。しかし一方で人口に限りのある美郷は、外側に交流幅を広げていかなければならない命題も背負っております。そこで地販地消の計画を早期にまとめて本格展開させながら、外側対策としての次の一手、町の交流幅を拡大させる新たな施策にも取り組んでまいりたいと考えております。
そうした考え方のもと、先般、東京都大田区と恒常的な物流に向けた新たな取り組みについて打ち合せをしてきました。どのような仕組みを構築できるかは未知数ですが、いずれ啐啄の認識で取り組みたいと考えております。そのため、農業者を含めた業者の皆さんには、「売る」意欲と主体性の発揮を大いに期待いたします。もちろん、はじめはできるところからの着手です。まずは町内の関係機関と戦略を練りたいと考えております。
実は現在、宮崎県にも「美郷町」があります。イラストシールの面では南の美郷にかないませんが、「なんとがしねばでげねべ」の認識で北の美郷もがんばりたいと思います。
(広報「美郷」平成19年12月号より)