コラム「風」平成20年2月
情熱の往(ゆ)くところ
秋田県美郷町長 松 田 知 己
まずもって、水道料金等の過徴収につきましては大変にご迷惑をお掛けしました。適切な事務推進には目配りをしてきたつもりですが、管理監督が充分に行き届いておりませんでした。改めて皆さんにお詫びを申し上げます。今後、一層注意を重ねてまいります。
この事でへこみ気味だった私は、先般、ある方から元気と勇気を頂きました。千畑地区にお住まいの戸沢恭助さん。気骨ある明治のお生まれの九十うん歳。素晴らしい音感とリズム感、声量で、年齢をまったく感じさせない歌をある場所で披露され、私は率直に感動しました。サムエル・ウルマンの詩「青春」にある「年を重ねただけで人は老いない」という一節を思い起こすと同時に、戸沢さんの元気の秘訣に思いを回(めぐ)らしました。
「好きこそ物の上手なれ」「継続は力なり」「一途に一つ事」。いろいろと言葉が浮かんできましたが、結局はサムエル・ウルマンの詩と同様、情熱に帰着しました。情熱は伝播します。だからこそ私は、戸沢さんの歌と姿に勇気と元気を感じたのだろうと内観しました。そしてこうした情熱や一途さは、全(すべ)ての事柄に共通するであろうことも思った次第です。
さて先日、今年の米の生産目標数量等を農家の皆様にご連絡いたしました。いわゆる転作を若干強化する内容で、これまでの苦労を考えると「またか」とへこんでしまうかも知れません。しかし、消費の現状を考えると仕方ありません。ここは一つ、農業への情熱といつかは必ず展望が開けるという想いを大切に、どうかご協力をお願いいたします。国に呼応して、町でもそうしたご協力にはお応えしていくようがんばります。また、そうした想いと取り組みは必ず消費者の心に届くとともに、努力は報われると私は信じております。
福田首相は今年の施政方針で、石川理紀之助翁の「井戸を掘るなら、水が湧くまで掘れ」という言葉を引用しました。この言葉の核心には、決して諦めない情熱と努力が存在しています。石川翁や福田首相には比べ様もありませんが、私も情熱をもって、さあ、がんばるぞ〜。(戸沢さん、ありがとうございました。)
(広報「美郷」平成20年2月号より)