コラム「風」平成20年6月
備え
秋田県美郷町長 松 田 知 己
「緑のパッチワーク」。ある方からの手紙に記してあった表現です。なるほど、現在の奥羽の山並みはまさにそのもの。パッチワークの美しさ、大いに心を和ませるところです。
一方、世界に目を転じると、先月はミャンマーでサイクロン、中国では大地震など戦慄を覚える自然災害が発生しております。目の前の心和む風景にも猛々(たけだけ)しい怒りが隠されているかも知れないと思った時、改めて自然の力と怖さを感ずるところです。
そして厄介なのは、こうした自然災害は残念ながら予測不可能なことです。さらに、寺田寅彦の言葉のように「忘れたころにやってくる」ことです。従って、対処の術(すべ)にも自ずと限界がある訳ですが、だからこそ「備える」ということが大変に大切となります。
町ではこうした観点で、これまで河川や水路の改修、小・中学校の耐震補強、消防施設や装備の充実など、各般にわたる備えに努めてきたつもりです。しかし、これで大丈夫という状況でもありません。そのため、新たな取り組みとして今年度から五ヵ年間の事業計画で、災害等への備えの強化に取り組んでまいります。
具体的には、防災関係の資機材整備や施設整備などを行う予定ですが、とりわけ重要視しているのは、いろんな情報を瞬時に町民みなさんに伝えるための防災行政無線の整備です。今般の中国の大地震を見ても、最新情報を逐次、皆さんで共有することがいかに大切かを感じるところですが、その術(すべ)である行政無線の整備には、情報伝達のためのスピーカー設置が必要です。そこで皆さんのご理解とご協力が必要となりますが、どうかその際にはよろしくお願いいたします。安心に向けての詳細は、これから詰めてまいります。
パッチワークの魅力は、いろんな模様の布を繋ぎ合わせることで生まれる調和の美ではないかと思います。きっと美郷の魅力も同じです。水環境や歴史文化、街並みや田園風景、それに安心感を加え、いろんな側面を持つことで魅力が深まるのではないでしょうか。
(広報「美郷」平成20年6月号より)