コラム「風」平成20年8月

教育への想い

 秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 梅雨明けから間もない七月某日の今日、蝉(せみ)が元気に鳴いています。つい先日までは「あ〜鬱陶(うっとう)しい」と思った鳴き声も、梅雨が明けたら一転、夏の情緒として私には心地よく沁(し)みます。この気持ちの変化、一体何なのか改めて考えてみました。

 エアコンがなかった頃、私の家では木陰のある西側の雨戸を「がえっ」と開けて、風を感じることが貴重な涼みでした。しかし梅雨どきは、畳は湿って肌にくっつくし、その状況ではセミの鳴き声は加湿器でした。一方、梅雨が明けると一転そこはパラダイスです。乾いた風がそよそよと入り、横になっても畳はさっぱり。「こだえられねえ」場所でのセミは、涼しさを演出する名脇役でした。

 人はいろんな事柄を蓄積し、それぞれの感受性や価値観を形成していきます。あの時のあの経験が、あの気持ちが「今」に至っているのかと思った時、改めて経験とりわけ成長過程での経験や思いがいかに大切であるかを実感するところです。実は、こうした想いが私の教育に対する根っこの部分でもあります。

 どこの自治体もそうでしょうが、美郷でも自治体としてやるべき当たり前の取り組みはしっかりとさせながら、子供達の記憶に残るような「美郷ならでは」の取り組みも重ねてきました。その端緒(たんしょ)が中学生の海外研修であり、絵本作家の永田萠先生や音楽家の青島広志先生のスペシャル講座などです。子供達が深い感受性と幅広い価値観を持った大人に成長していくよう、今後もできるだけこうした機会は設けてまいりたいと考えております。

 そのため、この度スタートした「ふるさと納税制度」については、その使途を教育に特化させることでまとめさせてもらいました。早速、ご賛同をいただいた方々からご寄附をお受けいたしましたが、皆様にはこうした想いもご理解いただければと思います。

 地域づくりは、最終的には人づくりです。次代を担う子ども達が心豊かな大人に成長した暁には、美郷は今よりもっとすてきな町になる。私はそう信じております。

(広報「美郷」平成20年8月号より)

このページに関する情報