コラム「風」平成20年9月
五輪とサムエル・ウルマン
秋田県美郷町長 松 田 知 己
あつい八月が過ぎました。とりわけ前半は高温多湿で、実感として暑い夏でした。また四年に一度の祭典、北京五輪も私たちの心を大いに熱くしてくれました。改めてスポーツの持つ素晴らしさを再認識です。特に有言実行の水泳の北島選手をはじめ、テレビ放映された多くの選手のがんばる姿は、理屈なしに私たちに勇気を与えてくれました。昨年の秋田わか杉国体同様、「感動をありがとう」です。
さて、今回の五輪、私はある選手に注目をしていました。法華津寛氏。馬術の日本代表選手です。日本選手団の最年長ということで、ご存知の方も多いはずです。何故注目したのか。それは、失礼ながらその年齢です。馬術は、比較的選手層に年齢幅があるらしいですが、それにしても、定年退職後に単身ドイツに渡り、第二の人生を馬術に賭けた法華津選手。そして六十七歳での五輪出場。そのバイタリティー、素晴らしいの一言です。
話は変わりますが、先々月、県経済界の重鎮、辻兵吉氏がご逝去されました。享年八十三歳。お亡くなりになる直前まで、各界の先頭に立っての牽引役でした。一体その意欲はどこにあったのか。ご葬儀で得心しました。座右の銘が、詩人サムエル・ウルマンの有名な詩「青春」でした。「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ちかたを言う。(中略)年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる。(中略)」。
そしてウルマンは続けます。「頭(こうべ)を高く上げ希望の波をとらえる限り、八十歳であろうと人は青春にして已(や)む」。お二人に共通するのは、この心持ちではないかと思う次第です。
今月十五日は敬老の日。私を含む若輩は、先輩であるご高齢者に対して、真摯に老いを敬う謙虚さに心を浸してもらいたいと思うとともに、ご高齢者には、決して自分はまだ「老いていない」ことを再確認していただきたいと思います。皆さんの心はまだ若い!
今年も町主催の敬老会を各地区で開催いたします。どうか、ご無理でない限りご参加をいただき、皆さんとの交流を通じて心の若さを保っていただきたいと願っております。
(広報「美郷」平成20年9月号より)