コラム「風」平成21年7月

見えるもの、見えないもの

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 「万緑や動かぬ山の近づき来」(永田孝一郎)。透明感ある夏の日差しのなか、緑鮮やかな風景が目に浮かんできますが、先般、京都から来町された方がこんなことを言っていました。「飛行機から降り立った時の空気のおいしさと緑の美しさ。秋田はいいですね」。

 住めば都とは言うものの、住む者には意外と分からないのがその地の良さ。よく言われることですが、さて、私ども美郷町はどうでしょうか。沈思黙考(ちんしもっこう)、今一度、生活の周りを見つめ直してみましょう。美郷の良さ、みなさんには何が浮かんできますか?

 言うまでもなく、私は第一に「水環境」です。守るべき、そして誇るべき美郷の良さとして独自条例を制定するとともに、今年から水環境保全プロジェクトを立ち上げ、取り組んでいます。そして、第二がこれです。こちらも今年からスタートしています。眼には見えない、誇るべき美郷の良さです。何だと思いますか?それは「結(ゆ)いっこ」の精神、つまりは、お互いに助け合ってがんばって地域を維持してきた、その「気持ち」です。

 町ではこの4月、六郷庁舎に「美郷町住民活動センター みさぽーと」を設置しました。現在の主な活動はボランティア活動の調整で、各種イベントや学校行事へのお手伝いなどについて、登録31団体、登録者延べ1,399人の方々とボランティア依頼者との結び付けを行っております。5月は2件、6月は11件とその活動を拡大中です。

 この取り組みは、自分ができることで地域づくりに参画してもらい、自主性や助け合い精神で良き美郷をつくっていきましょうという趣旨ですが、活動に参加することで地域貢献することの生きがいや友達の輪を拡大する楽しさ、ひいては脈々たる相互扶助の「気持ち」を将来にわたり育み、美郷の良さであるこの気風を維持したいという想いが核心にあります。どうかこうした趣旨と想いにご理解をいただき、ご参加をお願いいたします。

 物心両面。物事の運びによく使われる言葉ですが、今だからこそ特に心は大切にしていきたい。そんな思いとともに、名水の里のニテコサイダー、飲み干したところです。

(広報「美郷」平成21年7月号より)

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