コラム「風」平成21年11月

奥行き感

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 先日、久しぶりに体がぞくぞくする「感動」体験をしました。

 都内でひと仕事を終えた夕刻、閉館間際に滑り込んだある博物館。時間を気にしながらの早足の鑑賞でしたが、一枚の絵の前で足が止まりました。6曲1双の屏風絵、「朝陽霊峰」と題した横山大観の絵。重なる山並みと朝日を鳥瞰(ちょうかん)的に描いた大作でした。

 与えられている条件(制約かも知れませんが)、例えば平面で立体感を表現すること、屏風の大きさで広大感を表現することを、その絵は軽々と越えていました。気が付くと私は、その雄大な風景を鳥になって眺めていました。奥行き感を表現する力量に深く感動しました。

 そこで瞬間的に美郷町のことが頭に浮かびました。与えられている条件、例えば人口や地理、歴史や地域資源などの条件の中で、私たちはいかに奥行き感ある町をつくっていけるのか。大観の絵にその力量を問われているように感じた次第です。

 私は、町の奥行き感は「住み心地」感の深さであると考えています。では、その住み心地感はどうすれば出てくるのか。私は2階建ての取り組みから生まれてくると思っています。まずは1階部分で、どこの市町村でも実施する事務事業にきちんと取り組むこと。そして2階部分で、地域条件を踏まえて町独自の施策に取り組むこと。

 まずは1階部分について、私は職員とともに全力で取り組んできたつもりです。そして2階部分、例えば全幼稚園・保育園の「認定こども園」化や住民活動拠点「みさぽーと」の設立、独自概念の「地販地消」の推進や地域ブランド米「美郷米」の確立など各分野でがんばってきたつもりですが、充分かと問われると・・・忸怩(じくじ)たる思いもあります。

 合併5周年のこの機会。改めて独自の取り組みを計画的に積み重ね、奥行きを創出する努力を誓いたいと思います。みなさんには、引き続きのご協力をお願いいたします。そして現在、その中心となる町総合計画の後期基本計画案、丁寧に練っているところです。

 どうも最近、「おでこ」に奥行きが出てきた感じがします。ここの奥行きはいらないんですがね〜。

(広報「美郷」平成21年11月号より)

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