コラム「風」平成22年7月
不思議を感じる
秋田県美郷町長 松 田 知 己
空はなぜ青いのか。でも夕暮れはなぜ赤いのか。小学生の時に感じた疑問です。「あの時は、兄から教えてもらったな」という記憶がありますが、たわいない日常の些事(さじ)でも、自分が不思議に思った事柄やその記憶というものは、以外と頭に残っているようです。
さて先月、小惑星探査機「はやぶさ」がおよそ7年にわたる探査を終え、地球に帰還しました。月以外の採取サンプルを持ち帰ったのは世界初とのこと。「世界2番目」ではない快挙に、日本の技術力の高さと将来への可能性を感じたのは私だけではないでしょう。また数年前には、世界の先陣を切って鮮明な月面画像と各種観測データを人類に届けた月探査衛星「かぐや」の例もあり、この分野の活躍は「日本の誇りだ」と私は思います。またこうした技術を含む科学力は、「日本の未来に大切な要素」と私は信じております。そしてこうした偉業に際して、改めて教育の大切さを実感します。こうした科学力は一朝一夕では養成されないと思うからです。ではそうした力、どうすれば育(はぐく)まれるのでしょうか。
私は2つの面での教育が大切であると考えています。一つは、文章や会話を理解するとともに、表記または発言することができる教育です。体系的に物事を整理し、分かりやすく伝えること科学の分野でも必須だからです。もう一つは、何かに気付き、調べることを厭(いと)わない教育です。何かに不思議を感じ、それを解き明かす積み重ねが科学力につながると思うからです。そしてこの2点、私は美郷としてもがんばりたいと考えています。
その具体例の一つが、今月開催の「米村でんじろう先生サイエンスショー」です。児童・生徒には、ショーを通じて日常の中にある不思議を感じてもらうとともに、「そういうことか」という記憶を脳裏に刻んでもらいたいと思います。そうした記憶が下地となって、一人ひとり、少しずつ科学の力が蓄えられていくものと私は期待しております。
科学以外でも、世の中、たくさんの不思議に囲まれています。いろんな経験を積むことで初めて感じることもあります。だから、「生きること」がおもしろいのかも知れません。
(広報「美郷」平成22年7月号より)