コラム「風」平成23年2月
段階的
秋田県美郷町長 松 田 知 己
アルブレヒト・デューラー。有名なルネッサンス期のドイツの画家です。昨年末、その画家の版画・素描展を見る機会がありました。版画・素描ということで、「地味かな」と思いながら会場に足を運びましたが、鑑賞一作品目からそう思った自分が恥ずかしくなりました。実にすばらしい作品で、油絵とは違うモノトーンの魅力に時間経過を忘れるほどでした。制作過程を想像せずにはいられない精緻(せいち)な版画で、久しぶりに感動を覚えました。
その感動の延長で、不遜(ふそん)にも画家になったつもりで制作過程を想像してみましたが、やはりはじめは全体構図だろうと思います。次に光の表現、つまり印影の濃淡を決めての詳細イメージ。そして制作着手という段階的な制作過程だろうと思うのですが、絵を描くみなさんいかがでしょうか。私の専門分野、行政の仕事では、全体構図を決める構想、詳細イメージをまとめる計画、そして事業実施という流れが常道ですが、絵画制作もそれと同じプロセスではないかと思うところです。
さて、現在町では、こうした流れで一つの大きい仕事に取り組んでいます。学校統合に伴う空き校舎の利活用です。はじめから「○○小学校は何に使い、□□中学校は何に使いたい」という決め打ち手法もありますが、この課題は段階的な取り組み手法を選択しました。その第一段階が先月広報に掲載した活用方針案となるわけですが、住民検討委員会のご意見を踏まえ、いわば全体構図として構想をまとめました。その視点は、美郷全体の将来に必要な施設機能、つまり現在不足している機能は何かということです。
そして次の段階が、どこの学校に何の機能を持たせるかの詳細イメージ、計画となります。これも住民検討委員会からご意見をいただき、まとめてまいりますが、みなさんにもどうか、美郷全体で将来を考えたら・・・という視点でどこに何の機能を置くと良いのか、ご検討いただきたいと思います。
デューラーの版画・素描は、こんな思索も喚起してくれます。改めて思いますが、「いやぁ、絵画って本当にいいもんですね」(今は亡き水野晴郎風)。
(広報「美郷」平成23年1月号より)