コラム「風」平成24年3月
連鎖
秋田県美郷町長 松 田 知 己
栄養はあり余っているはずですが、最近、家内が体を心配して購入してきた栄養補助食品を試しています。決して暗示にかかる性格ではありませんが、なんとなく体調がいいのが癪(しゃく)なところです。言うまでもなく、こうした栄養補助食品は健康維持が目的です。ここ数年随分と種類が増えたとのことで、やはり「人は健康とその先にある長寿に意識があるんだな」と思うところです。
こんなことを考えると、私は決まってある人物が頭に浮かんできます。現在テレビで活躍中の「平清盛」です。なぜ清盛かと言うと、それはまったく手塚治虫先生のせいです。代表作の漫画「火の鳥」に平清盛が不老不死を欲して火の鳥を手に入れようとする描写があります。それが深く印象に残っているからです。火の鳥は永遠の命を有しており、ある時期になると自らの体を焼いて、また新たな体に生まれ変わるということになっています。つまり不死鳥の持つ永遠の命とは、途切れない命の連鎖ということのようです。
さて、今月いっぱいをもって町内の3中学校はその歴史に幕を下ろします。しかし、これで各校の伝統が無に帰するわけではありません。大切にしたい各校の伝統は美郷中学校という器で確実に融合し、火の鳥と同様に新たな姿に生まれ変わります。脈々として途切れない連鎖を生み出します。ですから間もなく卒業式を迎える卒業生をはじめ、2年生や1年生のみなさんも、胸を張って次のステップに踏み出してください。そして、有終の美を飾るとともに次に繋げたこの一年間の生活を誇りにしてください。みなさんが過去と未来の結節点をつくり、途切れない連鎖の姿をつくるのですから。
不老不死は誰しもが願い、しかし誰しもが為し得ていません。それでいいのだと思います。だからこそ私たちは諸行無常を理解し、「今を生きる」姿勢を持ち、そしてその延長線にある結節点や連鎖を意識していくのですから。
珍しく今月は難しい話になりました。たまにはごめんしてください。
(広報「美郷」平成24年3月号より)