コラム「風」平成26年4月
右手の力
秋田県美郷町長 松 田 知 己
美郷町として新たな期待を込めた10回目の4月を迎えました。目の前の残雪には溜息が出ますが、節目の年度、意欲をもってスタートしたいと思います。きっとみなさんの回りでは、スタートにふさわしい意欲や期待を共有するために、歓迎会など多くの飲み会が開催されるものと思いますが、意思疎通の場として、そうした機会は大切にしてもらいたいと思うところです。
さてその飲み会、「始めはビールから」という人が多いかと思います。いつからそのスタイルが定着したか知りませんが、たぶんビールの乾杯が一般化したのはここ半世紀程でしょうから、歴史的には日本酒の方が日本人には親和性が高いはず。その日本酒に関し、町では3月、日本酒で乾杯する条例を施行しました。「米の消費拡大か」と思うかもしれませんが、それだけではありません。実はもっと欲張りな「そのココロ」を少し紹介いたします。
この条例でめざしたいのは、まずは美郷の代表的特産品の日本酒とそれを取り巻く豊かな環境をアピールすること。穀倉地帯で水が良く、蔵元3つなんてそんなにありません。なお、ラベンダーから発見した「美郷雪華酵母」も醸造に適するとのことで、展開いかんでは、条例と相まってさらにアピール性が高まる期待もあります。また、転作廃止が予定される中、町内蔵元にできる限り町内産酒米を使ってもらい、将来の米栽培の多様化と消費量確保に備えたいというもの。さらにこうした取り組みを通じ、美郷の特色や独自性を深く認識してもらい、観光客の来町などにも繋げたいというものです。
こんな想いで制定した乾杯条例、どうかご理解をいただき、4月上中旬の歓迎会や下旬頃の花見などでは、できる限り町内の日本酒で乾杯していただくようお願いいたします。みなさんの右手に持つお猪口の一杯が、美郷の特色づくりや産業振興、そして観光振興にも繋がっていくかも知れません。
ただし、自分の実力は決して忘れないでくださいね。町が現在取り組んでいる生薬栽培では、残念ながら二日酔いに効く生薬はありませんので・・・
(広報「美郷」平成26年4月号より)