コラム「風」平成26年5月
かわいい子の旅
秋田県美郷町長 松 田 知 己
「かわいい子には旅をさせろ」。みなさんもきっと耳にしたことのある諺(ことわざ)です。「我が子が可愛いなら、親の元に置いて甘やかすことをせず、世の中の辛さや苦しみを経験させたほうがよい」という解説がありました。
作家の野田知佑さんは、親元を離れて川での生活を体験させる「川の学校」を主催しておりますが、あるテレビ番組で「(親元を離れた)寂(さび)しさが子どもを成長させる」とおっしゃっていました。また、同じ番組で作家のあさのあつこさんは、「(親元を離れる経験は)子どもの心の筋肉を付ける」とおっしゃっていました。「まったくその通りだ」と思います。
そして今月、親元を離れた人が心の筋肉を試される5月になりました。私事で恐縮ですが、遡(さかのぼ)ること32年前の私もこの時期、一人暮らしの心細さを乗り越えようとしていた一人でした。一方、反対の送り出す立場になってみると、「親も同じなんだな」ということが最近よく分かりました。親としての心の筋肉、充分でないことを自覚です。その意味で、冒頭の諺は実は子どものみならず、親の成長も促す諺なのかも知れません。
さて今月、美郷町は「かわいい子には旅をさせろ」を実践します。町の独自品種「美郷雪華」を旅に出します。しかも、場所はラベンダーの本場、北海道は中富良野町です。町固有の地域資源を活用して、できる限り全国的に美郷町の存在感を高めるとともに、他自治体と新たな縁を結ぶことで交流人口や観光客の来町を促進し、結果として一層の地域活性化につなげたい目的です。なおこの度は、中富良野町からもラベンダー株の贈呈を受けますので、双方の町営ラベンダー園で看板を設置し、PRに努めていく予定です。まずは、美郷雪華が北海道の自然環境と鑑賞環境においても「いい品種だ」と認められ、その意味で鍛えられた品種に成長することを望みたいと思います。
ルームフレグランスの発売や可能性ある酵母の発見。そして今回は本場北海道への旅立ち。みなさんの美郷雪華は、なかなかの素質の持ち主です。
(広報「美郷」平成26年5月号より)