コラム「風」平成26年6月

水の恋人

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 みなさんは「森は海の恋人」という言葉、ご存知でしょうか。宮城県気仙沼市の養殖漁業者の畠山重篤さんがリードしている取り組みのキャッチフレーズです。山林の落葉に含まれている豊富なミネラルが川を下り、海に到達することで海中のプランクトンを育て、そのプランクトンが牡蠣などを美味しく育(はぐく)むというもので、だから漁業者は川の源流の山林に落葉広葉樹を植樹しようという運動です。事象の原因を分析し、事柄の関連性を整理した取り組みですが、うまいフレーズをピックアップしたものです。

 さて、先日、七滝土地改良区が平成26年度緑化推進運動功労者として栄(は)えある内閣総理大臣表彰を受賞しました。七滝土地改良区の水源涵養林を通じた一連の取り組みが高く評価された結果です。誠におめでたく、美郷町の立場としても大変に嬉しく思います。何故なら、その評価に町の取り組みの七滝「水の森」植樹事業も含めていただいているからです。生活用水の約9割を地下水に頼っている町においては、まさに「森は水の恋人」なのです。この度の受賞を契機に、改めて皆さんでその認識を深めたいと思います。

 そうした認識の範疇で、町では今年、新たな取り組みに着手します。七滝の水源涵養林に加え、新たに未利用の町有林地にも落葉広葉樹を植樹していきます。樹種は生薬原料にもなるホオノキが基本です。豊かな水環境の醸成に寄与しながら、林業資源も育(はぐく)む一石二鳥を狙います。そしてその狙いを確かにするため、今月中旬、生薬原料としてホオノキを利用している製薬会社と連携合意書を取り交わします。ちなみにその植樹は7月上旬、NPO法人「みさぽーと」がリードしてくれますので、森と水の恋人関係をみなさんで深めてもらうよう、ご参加のほど、よろしくお願いいたします。

 しかし、「恋人」という言葉の響き、いいですね〜。日本酒での乾杯を推進する条例を制定した町としては、「日本酒は明日の活力の恋人」というフレーズも作ってみたい気分です。

(広報「美郷」平成26年6月号より)

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