コラム「風」平成27年2月

活路と苦悩

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 『【活路】窮地からのがれ出る方法』『【苦悩】苦しみ悩むこと』。広辞苑の解説です。最近、こうした言葉の相関をよく考えるようになりました。

 物事は、道筋があり努力で結果に至る事柄と、道筋が見えず模索で結果に至る事柄に大別できます。申すまでもなく、活路も苦悩も後者に属する言葉ですが、よく考えてみると活路と苦悩は不離一体です。活路には苦悩の過程が必要で、苦悩するからこそ活路があると言えます。ということは、良き活路を得るためには、良き苦悩という過程が必要という結論になります。

 では「良き苦悩とはどういうことか」となりますが、私の考え方は、まずは苦悩の現状を理性的に把握すること。感情的な把握はモヤモヤ感の原点です。そして望む未来を明瞭に見据えること。意外と漠然とした未来しか見ていない気がします。その上で多方面から熟慮、方策を比較検討すること。苦悩から脱したいあまり、比較検討のない安易な方策に陥る危惧があります。

 さて農業。米価ショックから農業者の苦悩が続いています。苦悩の核心は、農業所得の確保とそれを可能ならしめる営農類型。これまでも散々考え、諸々実践してきたものの、農業販売額は思うように伸びず経営費は下がらない。「どうすりゃいいのよ~この私」という気持ち、分かるところです。

 しかし「ちょっと待ったあ~」です。嘆息でなく思慮に切り替えましょう。3年後に転作廃止が決まっているからです。これは従前とは異質の農政大転換です。従って、改めて自分の現状、例えば労働力や農地・施設、農機具、希望を冷静に把握しましょう。そして世帯所得を踏まえ、農業部門で最低限どれ位の所得を必要とし、その実現に、例えば稲作を主として高値取引可能な米生産に注力するのか、特定の複合作目に注力して所得をあげたいのかなど、腹を括(くく)った自分の未来を明瞭にしましょう。その上でどんな方策であればそれを実現できるのか、比較検討して自分のプランを固めていきましょう。行政も3年後を見据え、理解される支援策を検討・準備してまいります。

 根拠のない信念ですが自信はあります。良き苦悩は良き活路に繋がることに。

(広報「美郷」平成27年2月号より)

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