コラム「風」平成27年12月
年末読書
秋田県美郷町長 松 田 知 己
先月、羽田発午後7時のJAL便で帰町する出張がありました。その時は天気が良く、眼下の美しい夜景に「うわあ、きれいだ」と子供のように感動しました。と同時に、なんでこんなに感動するのかをちょっと考えてみました。行き着くところは多様な光の存在でした。
夜景には、ビル照明の白、道路照明灯のオレンジ、それに赤色灯など、多様な光が存在しています。星空と同様、色の混交が根源的な美意識をくすぐるとともに、多様な光は多様な産業展開の結果でもあり、それにも感動したのだと理解しました。そして、「これは人の社会も同じだな」との思いも生じた次第です。
社会には、確実に多様な個性と価値観が存在しています。だからこそ多様な可能性と展開があり、社会が輝けると私は思っています。その維持には、基本的に多様性の受容が求められますが、そこが欠落すると、自己中心ゆえの他者批判という低次元の言動に陥ってしまいます。そうならないためには、自己啓発の意識と実践が求められますが、手っ取り早い実践は読書であると私は信じています。
読書は、申すまでもなく知識の蓄積とそれを踏まえた思考整理等のきっかけをつくります。また、例えば小説においては、他者の人生を歩むという仮想経験を得ることで、改めて人生を考えるきっかけもつくります。こうしたことが、結果的に自己啓発とともに、他者の個性等を認識し、多様性を受け止める機会になるはずです。
先月、東京日本橋東ロータリークラブ様から、町内の学校に図書が寄贈されました。きっかけは当該クラブ会員である町内企業の社長さんです。そのご縁で、私は昨年、卓話をさせていただきましたが、美郷の子供たちに奉仕活動をしたい旨の打診もいただき、日頃の想いをもって複数の提案をさせていただきました。決定したのが図書の寄贈でした。心から感謝を申し上げます。そして読書の持つ意義が、子供たちに深く浸透することを期待したいと思います。
年末に入り、何かと忙しいことと思います。だからこそ心に多様な栄養補給です。今年の締め括りの読書、みなさんでいたしましょう!
(広報「美郷」平成27年12月号より)