コラム「風」平成28年11月

造形と意匠 

  秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 先般、ある方の写真展に行ってきました。折に触れて開催される個展では、いつもその方の感受性と感性に感動しますが、「水の抽象・光の具象」と題した今回も、それは素晴らしい作品群でした。

 今回、その一つに「花の造形 雲の意匠」という書があり、その続きに花と雲の写真が展示されておりました。造形、そして意匠という言葉がしっくりくる作品でした。その写真を眺め、改めて自然が醸す造形と意匠について思慮するとともに、身近にある造形と意匠を思い浮かべてみましたが、浮かんできたのは「板」でした。

 私の自宅は、設計の関係で腰壁材、天井材が北欧の松材です。そしてその杉板は実に節だらけです。まさに自然の造形の結果ですが、それが連続すると今度は意匠に早変わりします。はじめは節の存在に違和感がありましたが、今では節の醸すデザイン性に満足しています。改めて「節」の大切さを実感するところです。

 他方、広く見渡してみると、やはり「節」が大切な事柄は多く存在しています。物理的なもののみならず、精神的な意味合いの強い「〇周年」という節目もその一つだろうと思います。個人的見解ですが、私は「周年」を意識して大切にする組織には、確かな未来があるように思っております。それは節目に際して来し方を振り返り、思慮を巡らせるところに未来の見通しがあると思うからです。ちなみにですが・・・家庭では結婚記念日を大切にしているご夫婦、きっと良い未来があると思います(何の責任も負えませんが)。

 そして美郷町。この11月1日で誕生13年目に入ります。人で言えば小学を卒業し、中学に入学です。捉え方によっては大きな節目の一つです。これまでの5年刻みの節目に加え、卒入学の観点で来し方を振り返り、美郷町をみなさんがどう造形してきたのか、また、今後どう意匠を凝らして特色ある町にしたいのか、思慮の機会にしたいものです。そこから生まれいずる想いは、この節目が持つ意味となります。そしてこうした節は、増えるにつけ町づくりへの意匠に繋がっていくものと私は信じています。

(広報「美郷」平成28年11月号より)

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