コラム「風」平成30年3月
将来の舞台に備えて
秋田県美郷町長 松 田 知 己
先日、読売新聞日曜版に憲政の神様と呼ばれる政治家、尾崎行雄さんの言葉が掲載されていました。「人生の本舞台は常に将来に在り」。解説に「慢心する者を戒め、失意の中にある者を奮い立たせる」とありましたが、なるほど、奥行きのある言葉だなと思いました。
私はこの言葉を目にし、ふとある方の顔を思い浮かべました。1月30日にご逝去(せいきょ)された美郷大使の町田睿さんです。町田大使には、鑑賞用だった美郷雪華の特産品活用のきっかけを頂いたほか、会話の中で折に触れて、現状に満足せず卑下(ひげ)もせず、常に将来に向けた展開を求める大切さを教えられました。先の言葉と同質の示唆を、言葉を違(たが)えて話をしてくれていたものと思います。改めてご教導に感謝しながら、ご逝去を悼(いた)み、心よりご冥福をお祈りいたします。
さて行政には、常に将来を見据えた視点や努力が求められます。それは今の展開が確実に将来の姿を形作るからです。とすれば私たちは、今という価値を理解し、将来に舞台があることを認識して努力を継続することが必要となります。従って、行政においては課題の無意味な先送りやその場凌ぎの判断と対応は、基本的に許されないものと私は思います。例えその対応がいくら苦しくても、です。
美郷町は合併以来、一貫してこうした認識を大切にしてきたつもりです。今年度もその延長線で大きな課題3点に取り組んでおります。一つは各種団体等への補助金です。改めて公金支出の目的や使途の明確化を深めてまいります。もう一つは公共施設等の最適化です。合併後の公共施設再編とは違う視点での検討です。そして観光と物産に関する組織統合です。三本の矢よろしく、統合による力強さを求めます。すべて今月中に方針等を固めたい考えですが、みなさんには、変わることが守るべき本質の継承に繋がり、発展に向けた土台と可能性になることに、ご認識とご理解をお願いいたします。
やはり「○○の本舞台は常に将来に在り」という言葉、深いです。○○に企業と入れても成立しますし、健康や結婚と入れても成立します。さてさて、みなさんは○○に何を入れたいですか?選んだその言葉、今あなたが一番大切にしたい事柄ですね、きっと。
(広報「美郷」平成30年3月号より)