コラム「風」平成30年10月
民藝の心
秋田県美郷町長 松 田 知 己
紅葉が始まる時期になりました。一口で紅葉と申しましても、実は葉の色によって赤が紅葉、黄色が黄葉、褐色が褐葉と言うそうです。いずれ、単色であれ混色であれ「紅葉」は美しいわけですので、この時期ならではの美しさ、できる限り堪能したいところです。
そして、別の「堪能」も本格化です。そうです、味覚です。新米の香りとつや、楽しみたいと思います。ちょっと遅れて、里芋はねぎときのこで芋の子汁。これも最高。また、大根はおでんに。あつあつに辛子をつけて、きゅっと一杯。いいですねえ。太って当たり前のこうした味覚、私たちは漢字で「美味(うま)い」と表しますが、味覚に「美」という字を使うあたり、日本人の美意識の広さと感じます。
こうした日本人の美意識ですが、やはり、日常生活すべてを美の対象に見ていたのだろうと思います。でなければ、日常生活における味覚の「美味」も聴覚に付随する「美声」も、言葉として存在しなかったと思います。考えれば考えるほど、「実に面白い」(ガリレオシリーズご覧の方はご存知のセリフ。借用!)と思うところです。
その日常生活における用具の「美」を感受し、評価していこうとするのが「民藝」です。民衆的工芸から命名されたと言われています。思想家で民藝運動の提唱者柳(やなぎ)宗悦(むねよし)は、職人の手で制作された生活用具には用に即した健全な美が宿っているとして、手仕事の文化を守り育てることが生活をより豊かにする旨、主張しております。
そして、かねてより美郷町には、わら細工、あけびづる細工、竹細工という日常生活に根ざした手仕事がありました。まさに民藝です。こうした手仕事を今後も大切にしたいという想いを込めて、町では学友館において今月6日から、「民藝のモノと思想~暮らしの中の美を探る~」と題した特別展を開催します。みなさんには是非ともご覧いただき、日常生活にある美に意識を高めていただくとともに、美郷の手仕事であるわら細工等について、継承していこうとする意欲や機運が高まることを心から期待したいと思います。
民藝の心は、日常生活への見方と評価を研ぎ澄ますと思います。
(広報「美郷」平成30年10月号より)