コラム「風」平成30年11月
煙(けむ)に巻かない対応
秋田県美郷町長 松 田 知 己
私の家はかつて、お酒や塩、煙草(たばこ)という専売物に加え、お菓子を含む食品類や缶詰、洗剤やたわし、電球・電池や糸・針なども販売する、いわゆるコンビニのような雑貨店でした。もう「今は昔の話」ですが、過去の記憶を手繰(たぐ)り寄せますと、学校から帰るなり店に行き、お金も無いのに「買った」と伝えていろんなお菓子を食べ、店にある電池と電球で工作して遊ぶなど、子供心にも「雑貨屋っていいよなあ」と、ニンマリした記憶が残っております。
学生時代も自宅での友人との飲食は調達に困りませんでした。その分、忙しい時には店の番頭をこなして、農作業も手伝うなど「労働奉仕」してきましたので、「まあいいや」と罪悪感を帳消しにしております(笑)。しかし、そんな勝手な息子でも手を付けなかった商品があります。煙草です。その理由は今では思い出せませんが、体に良くないという意識が、どこかにあったのだろうと思います。
その煙草、国や地方の大切な税源となっていることは、みなさんご存知のとおりです。美郷町では昨年度約1億6百万円いただいております。このように税源として貢献してきた煙草ですが、現在は分(ぶ)が悪くなっております。肺がんなど喫煙による健康被害が顕在化してきているからです。そのため、近年は受動喫煙の防止対策の強化も求められてきており、今年7月にはそれに関連する法律が成立、現在は全国の自治体でその対応が求められているところです。
美郷町は、かねてより健康長寿に向けたセルフケア推進に取り組んできておりますので、受動喫煙の防止についても真剣に考えなければいけません。そのため、愛煙家の方々には誠に申し訳ありませんが、健康を優先する価値観を大切にし、きちんとした対応をすることにしました。今後、公共施設とその敷地内は全面禁煙にいたします。来年1月から役場庁舎と保健センターで先行実施し、来年4月からは温泉や道の駅なども含む全ての公共施設とその敷地で、全面禁煙となります。「愛煙家のみなさん、ほんとにごめんなさい」。
煙草であっても「煙(けむ)に巻く対応」はできません。どうかご理解を。
(広報「美郷」平成30年11月号より)