コラム「風」令和元年8月

経験という名の種

秋田県美郷町 松 田 知 己 

 夏は恋の季節と言われますので・・・一目惚 (ひとめぼ) () の話から。「自分は惚れっぽいなあ」と自認している人は、きっと一目惚れの経験があると思いますが、みなさんはいかがでしょうか。まずは自分のことを告白しますと・・・私にはあります。そして、その一目惚れの結果が我が家に存在しています(とは言っても妻ではありませんよ)。

 みなさんは「徽宗 (きそう) 」をご存知でしょうか。書画の才能に恵まれた芸術家で、中国は北宋時代の第8代皇帝です。私はその徽宗の「書」に一目惚れしてしまいました。かつて東京国立博物館で開催されたある企画展で出会い、まさにビビビッと来ました(この表現、芸能通なら分かりますよね)。結果、「痩金体 (そうきんたい) 」と呼ばれている徽宗の書の複製が、我が家の壁に掛かっているという結末です。

 なぜ書に興味があるのかということですが、小学生の頃に書道教室に通って(通わされて)いたからではないかと思います。その経験が興味の原点になっているように思っています。そう考えるとやはり「経験は大切」で、何かの折に「経験という種」からひょっこりと芽が出て、伸びることもあるということなのだろうと思います。 

 美郷町がこれまで子供たちにいろんな経験の機会を作ってきたことも、実はこうした期待を込めています。多くの経験の種の中から、一部でいいのでいつの日か芽が出てもらいたい。そしてその芽が、その子なりの個性として伸びていってもらいたいと願っております。ちなみに、今月実施のタイ王国の中学校との生徒交流もそのひとつです。参加する生徒には、積極的にいろんなことを経験してもらいたいと思います。また、12月にタイ王国から来る中学生は、美郷中学校全員が受け皿となりますので、子供たちには積極的に交流を図ってもらい、良い経験となることを心から願っております。

 もちろん、大人についても同じです。いろんな機会に参加し、経験という種をさらに蒔いてもらいたいと思います。そしていつの日か、今までにない一目惚れを経験し、心豊かに人生を重ねていただきたいと思います。ただし身内に叱られない一目惚れを、ですよ。

(広報美郷 令和元年8月号より)

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