基点をつくる

秋田県美郷町　松　田　知　己　

　秋田では10月に放映された「出張！なんでも鑑定団in美郷」。ご覧になった方も多いと思いますが、合併15周年記念行事にふさわしい盛り上がりでした。私も個人として出演組に残り、鑑定してもらいましたが、結果は「残念！」。でもまあ、面白かったと言う方が多かったので、負け惜しみではなく良かったと思っております。

　番組を見た友人からは「他にお宝がなかったのか？」と言われましたが、価値を別にすると実は「これぞ本物」という「偽物のお宝」があります。ビートルズの海賊版レコードです。海賊版ですのでビートルズにとっては偽物。しかしレコード自体は非常に音質が良く、ビートルズの海賊版カタログにも掲載されている本物です。

　このレコード、中学生時代に親に内緒で購入したレコードで、愛着もあって随分聴きましたが、プレーヤーが壊れて以来聴いていませんでした。ところが先日、このレコードを数十年ぶりに聴く機会に恵まれました。知っている方が「これぞ最高！」というオーディオ一式を持っており、そこで聴かせてもらった次第です。

　いや～感動しました。中高生時代とは違う「深みのある感動」でした。平たく言えば歳を重ねて感性や感受性が老熟し、記憶にある若い時の感動との違いを感じたということだろうと思います。こうした違いを実感すればするほど、「人」は面白いなあと思います。ですので、面白さをのちのち実感するという意味において、私は未来の大人である子供たちには、過去と現在を比較できる基点、つまり多くの経験と記憶を持ってもらいたいと常々願っております。

　その観点で、今月号では美郷中の生徒に願いを伝えたいと思います。12月11日、タイ王国のアニュラチャプラシット校から生徒が来町します。その際、積極的に関わり、多くの記憶を作ってもらいたいと思います。その記憶が、将来は当たり前になる外国人との関わりにおいて、自分の成長を把握できる基点になり得ると思いますので。

　美郷中の生徒は本欄を読んでいないと思いますが、本欄名称のように、風に乗って私の願いが耳に届くことを期待しております。

（広報美郷 令和元年12月号より）