コラム「風」令和2年2月
引き出す機会
秋田県美郷町長 松 田 知 己
まさかこんな冬になろうとは、誰もが予想していなかったと思います。生活はとても楽ですのでありがたい訳ですが、一方、雪に関わる仕事の方は大変です。「どうせ、いずれは雪が降るよ。それまでの楽ちん」と思っていた年末年始の無邪気さから一転、今は今後の影響が心配な複雑な気持ちになっているところです。
年末は特に、無邪気さゆえのまったり気分でテレビの日々を過ごし、私は映画や音楽番組を楽しみました。井上陽水さんの特番では多くの井上陽水リスペクト歌手が登場しましたが、そのお一人が松任谷由美さんでした。テレビの力は凄いですね、私はユーミンの話を聞いているうちに、自分の「卒業写真」を見たくなりました。
そこで本部屋に向かい小学、中学、高校、大学の卒業アルバムを探し出し、「若いなあ、みんな」と感慨にるとともに、沸々と沸き上がるそれぞれの時期の記憶にし浸りました。改めて、大切にすべきモノを大切にする大切さ(笑)も実感した次第です。と言うのも、アルバムを眺めたから引き出された記憶が確実にあったからです。
日本社会は大量消費の社会です。そしてそれを支えているのがモノを捨てることです。積極的に賛成したくありませんが、それを否定もできません。一方、ワンガリ・マータイさんが世界に広めた「もったいない」思想は、持続性ある社会には絶対必要であると私は思っています。二つをガッチャンコすると出てくる答えは、「大切にすべきを大切にすることの大切さ」。この答えは、個人も組織も地域もすべて共通だろうと思います。美郷町でも、そこはこれまで意識してきているつもりで、だからこそ人との関係性、モノの保存保管などを意識した行政運営に努めてきているつもりです。
現在、学友館で開催中の「美郷伝来の名品-弥生から現代-」展は、まさにモノについて大切にすべきを大切にしてきた姿です。是非、みなさんにご覧いただきたいと思います。目の前の品々がみなさんのどういう意識や認識を引き出し、未来に向けての意志をどういう形で後押ししてくれるのか、大いに期待したいと思います。
(広報美郷 令和2年2月号より)