コラム「風」令和2年11月
心の栄養
秋田県美郷町長 松 田 知 己
「まったくそのとおり」。ある日の朝、NHKのニュースで流れたコメントに私は頷(うなず)きました。コロナ禍にある今、あの有名なパリコレクションも変化せざるを得ず、関係者が一堂に会する例年のような形ではなく、オンライン動画を使って発表を行うとのこと。それに関した、ファッションデザイナー黒河内真衣子さんのコメントが素晴らしかったです。「コロナ禍において洋服は必須の存在にはなり得ませんが、心の栄養になると信じています」。ファッションの存在意義を心の栄養、つまり心の成長の糧に求める認識です。
物体の価値は、それ自体に絶対的価値がある訳ではなく、あくまで個人の心がその価値を決めます。相田みつをさんの「しあわせはいつも自分の心が決める」と同質です。だからこそ大切なことは、価値を決める個人の心がどういう位置にあって、どういう状態なのか、ということではないかと思います。申すまでもなく望ましいのは、心が高い位置にあって、かつ整った状態で価値を判断できることですが、それを望むとするならば、やはり努力は必要だろうと思います。心の成長に向けて栄養を補給しようとする努力です。
美郷町では11月29日まで、「川端龍子―風雲児の日本画―」と題した企画展を学友館で行います。平成17年に東京都大田区と結んだ「友好都市提携」15周年の記念特別展で、すべての作品が大田区の所有です。開催目的は、日本画の巨匠川端龍子の作品を通じて、改めて大田区との関係を深く認識していただくとともに、芸術鑑賞を通じて、心に栄養補給してもらいたい主旨です。コロナ禍でぼんやりとした不安に苛(さいな)まれ、窮屈な生活を余儀なくされている今だからこそ、心への栄養補給の意識は大切にすべきと私は思います。貴重な機会です。是非とも多くの方にご覧いただきたいと思います。
さてさて、心の栄養について触れてきましたが体の栄養も大切。今は、収穫の秋を経て美味しいもののオンパレードの時期です。きりたんぽ鍋や芋の子汁、大根のおでんに地酒の熱燗・・・おやおや、最後の一品は体の栄養とはちょっと違いますかね~(笑)。
(広報美郷 令和2年11月号より)