コラム「風」令和3年7月

意義の見つけ方

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 立ち読みで(本屋さん、ごめんなさい)パラパラと (ぺいじ) をめくりながら飛ばし読みしていたところ、目に飛び込んできたのが「 (なんじ) 、何の為に其処 (そこ) に有りや」という言葉。読んだとたん、「ズキュン」と胸を撃たれました。随分と前のことで不確かですが、歴代の東京大学総長の入学式や卒業式での式辞をまとめた本だったと思います。

 この言葉、申すまでもなく「存在の意義」を問うています。「生きる」ことの根幹にあるべき意識として、また、あらゆる場面に求めたい姿勢として、大切にすべき格言だなと思いました。そしてこの言葉は、日常の些事 (さじ) にも当てはまるようにも思いました。「汝」を「その経験」や「その記憶」と置き換えても成立するからです。
 例えば、失恋の経験や記憶も、「あれがあったから女性の心が分かった」とか、「立ち直りには出会いが必要だ」とか、そのおかげでの気付きがあり、意義を見出すことができます。仕事上や生活上の成功や失敗も同様で、それぞれに意義を見出せそうです。そう考えると、やはり物事には意義の見つけ方があり、それは「マイナス思考ではなく、プラス思考で考えること」に尽きるように思います。「暗いと不平を言うよりも進んで灯りをつけましょう」的な考え方です。

 さて、さまざまな意見の中、東京2020オリンピックが開催されます。美郷町においては、タイの選手の事前合宿が中止になり、とても残念でした。しかし、これまで選手と交流し、美郷中学校はタイと交流し、そして聖火リレーが通過したのは、事前合宿のおかげです。中止で取り組みが無駄になったと考えるのではなく、得難い経験や将来の可能性を得たという意義を確認したいところです。

 その延長で、オリンピックへの向き合い方を考えると、開催が決まった以上は貴重な機会です。是非、テレビ等を通じて選手を応援したいものです。いま世の中は、新型コロナでいっぱいいっぱいです。だからこそ、「挑戦」する世界のアスリートの姿に触れられるこの機会、のちのち必ず深い意義を生むように私は思います。

 当然、徹底した感染予防対策が前提にあってのことですが・・・。

(広報美郷 令和3年7月号より)

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