コラム「風」令和4年10月
秋と五感と行動と
秋田県美郷町長 松 田 知 己
今年の稲刈り作業に8月の長雨、そして台風の影響がないか心配していましたが、大体は順調に進んでいるようです。それに伴い、外を歩けば得も言われぬ稲わらの香りが漂ってきます。この香り、嫌な人には要らぬ香りかも知れませんが、そうでない人、例えば稲わらが好きな私には、まさに表現が難しい「癒し」効果を持つ、極上の香りです。出来秋を迎えていることを農家のみなさんと一緒に喜びながら、この香り空間の出現にも喜びたいと思います。
さらにこの香り、私には幼少期を思い出させる記憶覚醒スイッチでもあります。この香りに包まれると、父を手伝いテーラーで籾を運んだこと、収穫作業を畔で待つ間、赤とんぼを指に止まらせ遊んだこと、手伝いが終わり「あ~疲れた」と家に帰るときの夕焼けの色などなど、ほのぼのとした多くの記憶が蘇ります。まさに香りスイッチです。稲わらの香りに当時の情景が紐付けられているからですが、嗅覚や味覚、触覚など五感に紐付けられた実体験が、いかに長く記憶にとどまるのか、改めて認識するところです。
さて、10月はいろんな形容がつく「秋」の代表月。町内ではさまざまな行事が開催されます。2日は読書フェスタ、6日は総合防災訓練、8日はNPO法人等によるバレーボール大会、21日は美郷経営塾、22日~23日は美郷フェスタ、25日は中学校新人駅伝競走大会、29日は美郷カレッジに加え、「ふるさと美郷の画家三人展」開会、30日はソフトテニス教室などなど。また、町内スポーツ団体による各種大会なども多くあり、まさに文武両道の行事があります。「〇〇の秋」にふさわしい多様な経験ができる月となりますので、みなさんには新型コロナ感染予防に留意しながら、多くの行事やイベントにぜひとも参加し、その情景を五感に紐付けすることで、記憶に残る「行動の月」となりますことを願っております。
「思い出は美しすぎて」。八神純子さんの曲です。確かに稲わらに紐付けされた記憶は、ある意味美しい思い出です。がしかし、現実は甘くありません。中学生の時、無灯火の自転車に正面衝突されたことがあります。幸い自転車のみの破損で私は無事でしたが、その際もこの香りでした。実は痛い思い出も紐付けされています(笑)。
(広報美郷 令和4年10月号より)