コラム「風」令和5年12月
支援の内側
秋田県美郷町長 松 田 知 己
今年も師走に入り、一年の締め括りの月となりました。振り返ると、忙しさも相俟ってか「一年が短いなあ」という感慨に至ります(単に歳を重ねた結果の特徴かも知れませんが)。こうした今年、最も印象に残っているのが、夏の異常高温です。連日の猛暑に熱中症やら作物への影響やらを心配した日々でした。
そして、残念ながらその心配は的中してしまいました。最も大きいのが水稲「あきたこまち」への影響です。高温障害による乳白粒や背白粒が多く発生し、一等米の比率が大幅に低下。本来、一年の難儀を収穫という形で喜ぶことができる「出来秋」のはずですが、気持ちは満足とは言い難い心境にあるように思います。
ただし、食味は例年同様、美味しいことに変わりはありません。新米の香りは充分にありますし、食感もモチモチ。従前のあきたこまちとの差を感じません。その点で、あきたこまち生産農家のみなさんには、しょげずに来年もがんばっていただきたいと思います。また、こうした応援の気持ち、きっと消費者みなさんも共通して持っているはずと、私は信じております。
もちろん、こうした応援の気持ちは行政機関も同じです。昨年から今年にかけては、物価高騰の中でも営農を「がんばれ!」という認識で、春先使用の肥料に支援策を講じてきたところです。ちなみに商工事業者等には、全分野が対象ではありませんがエネルギー価格高騰に関して支援策を講じてきているところです。
そして今回、異例と言っていいお米の状況に鑑み、新たに水稲の営農継続を支援する施策を準備することにしました。町議会で予算審議いただいたのち、然るべき時期に農家のみなさんに詳細を提示したいと思います。農業は産業の一つではありますが、国の食料安全保障に関わる産業です。農家のみなさんにはその矜持を持って、来年営農にがんばっていただきたいと思います。
とても寒い日、ポケットに入れたカイロは、体の暖かさのみならず、心にも温かさを生むように思います。この度の施策、小さいかも知れませんが、そう感じていただきたいと願っています。
(広報美郷 令和5年12月号より)