コラム「風」令和6年10月
豊かさを求めて
秋田県美郷町長 松 田 知 己
稲刈り後に漂う稲わらの香り、本当にいいですね。私はほんわかした情緒を感じるとともに、今年の場合は「心の豊かさって何だろう」という、鬼が出てくるCM映像も頭に浮かんできます。
その「豊かさ」ですが、人それぞれ基準が違うために、万人が共感できる概念の定義付けは、本当に難しいのではないかと思います。その延長線上にある「幸せ」についても一緒だろうと思います。
こうした曖昧な概念を具現化していくことは、やはり難しいわけですが、それぞれの自治体はそれを求めて、いろいろがんばっています。美郷町ももちろんです。
町のがんばりの方向は、まずは各種制度や施設等の充実を図り、町内での生活に「足る」状況を作っていくこと。そのため、これまで福祉や教育等での制度充実や、道路や公共施設等の整備に努めてきております。もう一つが、町民一人ひとりが自身の豊かさの基準を確かにしていく「機会」を多く作ること。そのため、これまで「感じる」、「考える」機会として、学友館企画展や自衛隊コンサートの鑑賞機会、美郷カレッジや教育・福祉関係の講演聴講の機会、各種スポーツ競技の観覧・体験の機会などを作ってきたところです。
その後段の範疇の話になりますが、町は今年度から新たな取り組みに着手しています。町中央公園を野外芸術空間に変身させ、日常的な芸術作品とのふれあいで何かを感じ、考える機会にしたい目的です。年一作品ずつ設置していく予定で、複数の制作候補者から模型を提出してもらい、今月、選考会にて制作者を決定します。また、選考用に提出していただく模型作品も町の所蔵品になりますので、一粒で二度美味しい取り組みとなります。第一作目は来年度の設置になりますが、どんな作品が中央公園にお出ましになるか楽しみにお待ちいただき、多くの方が何かを感じ、考える機会となりますことを、心より期待したいと思います。
10月は豊穣の秋の真只中。味覚も豊かさ実感の月です。どんな肴とお酒で豊かさを実感できるのか、左党のみなさんは待ち焦がれているのではないでしょうか。もちろん私もその一人ですが。
(広報美郷 令和6年10月号より)