コラム「風」平成26年12月

節目の想いと形

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 「扁額(へんがく)」という言葉、みなさんはご存知でしょうか。門戸などに掲げる横に細長い額のことです。実は私が知ったのは社会人になる間際でした。教えてくれたのは何かと本を読んでいた亡き父です。「社会人として覚えていた方がいいだろう」との認識だったんでしょう、飲食の折に教えてくれました。

 記憶では、その言葉を教えてもらいすぐ頭に浮かんだのが、母校横手高校の講堂に掲げられていた「天佑自助」という額。「天は自ら助くるものを助く」という意味ですが、高校生の時は「大きな額だなあ」程度の認識でしかなく、不謹慎ながらどういう意味で誰が書いているのか、全く興味ありませんでした。裏返すとその程度の生徒だったわけです、恥ずかしながら。

 そして扁額という言葉を知ったあと、社会人になるという高揚感も相まってか、「大きな額だなあ」程度の書が急に深みのある書に価値が高まり、「もっと勉強しとけばよかったなあ」と反省に至ったことも覚えています。知識の有る無しで、一物(いちぶつ)の価値は変わり得るということなのだろうと思います。

 さて先月の美郷町合併10周年記念式典、お陰様で滞りなく終えました。この節目に当たり私は、扁額にする目的で美郷大使の皆さんに揮毫(きごう)をお願いしました。そのココロはこの節目を未来に繋がる形で残すこと。前述の経験も含め考えた結果、大使扁額を学校に掲げ、想いを伝える企画としました。

 町田大使と佐々木大使、高階大使からは揮毫いただくとともに、永田大使からはなんと絵画をいただきました。本欄を借りて改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。未来に向けた美郷町の大切な財産となります。

 その扁額と絵画、今年度中に学校に配置し、子どもたちが自然に目にするところに掲げてもらう予定です。子どもたちが扁額や絵画から何を受け取り、どういう記憶を残すか楽しみなところです。また、町民みなさんにも是非見てもらいたく、学友館に一定期間展示します。どうかご覧ください。

 「想いを形に」。私の好きな言葉です。大使の想いは扁額と絵画として形にしてもらいました。私の想いは学校に掲げてもらうことで形になります。

(広報「美郷」平成26年12月号より)

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